会社から独立してフリーランスをやってみようと思っても、どんな書類を用意したり手続きをしたりしたら良いかわからないですよね。
この記事ではフリーランス歴3年の著者が、フリーランスの知識ゼロの方でも理解できるように、フリーランスになるための情報を紹介しています。
この記事でわかること
- 開業届を出すメリットやデメリット
- 開業届に必要な書類の入手方法や提出する手順
- 開業届を提出する前後にやっておくべきこと
- 開業届に関する「よくある質問」
開業届はフリーランスを目指すなら収入の有無関係なく、かならず提出しましょう。
なぜなら開業届を提出するメリットのほうが高いからです。
この記事を読むことで、不安だった開業届に関する手順や疑問が解消されるため、自信をもって開業手続きが行なえます。
開業届とは事業を始めた人が出す書類のこと
開業届とは事業を始めた人や企業が、国に対して提出する書類のことです。
開業届の提出は義務付けられており、事業開始日から1ヶ月以内に税務署へ提出する必要があります。
しかし罰則がとくに設けられていないため、開業届を出さずにフリーランスとして働いている人も少なくはありません。
開業届を提出しないほうがいい人はいない
開業届を提出すると税金を収めたり、売上の帳簿付けなどが必須になります。
そのため「開業届を提出したほうが損するのではないか」と考えてしまい、未提出にしてしまう方も中には一定数いるようです。
しかし開業届を提出しないほうが損をするため、フリーランスとして働く方はかならず開業届を提出しましょう。
フリーランスが開業届を提出するメリット
フリーランスが開業届を提出するメリットは、大きく3つあります。
- 節税できる
- 社会的に信用される
- 小規模企業共済に入れる
それぞれ解説していきましょう。
節税できる
開業届を提出するもっとも大きなメリットが、節税できることです。
開業届を提出することで節税効果が高い「青色申告特別控除」というものが利用できます。
青色申告特別控除は所得から最大65万円の控除が受けられるため、節税効果が非常に高いです。
※所得とは売上から経費を差し引いた「税金を収める対象となる金額」のことです。
注意点として青色申告特別控除は開業届を提出してから2ヶ月以内に「青色承認申請書」を提出しなければ利用できません。
他にも事業に関する必要な出費は経費として計上できるなど、開業届を提出する最大のメリットは「節税できること」と言えるでしょう。
社会的に信用される
開業届を提出することで「独立している」という証明ができるため、社会的に信用されるのもメリットです。
たとえば開業届を提出していない場合、事業用に事務所を借りようとしても「無職」と捉えられて入居審査に通ることはないでしょう。
フリーランスにとって開業届は証明書がわりになるため、社会的に信用されるのがメリットです。
小規模企業共済に入れる
開業届を提出すると国の機関「中小機構」が運営する「小規模企業共済」に入れるのも、メリットの1つです。
フリーランスの場合、万が一事業の廃止をしたり将来的に事業を辞めたとしても「退職金」はありません。
しかし小規模企業共済に加入しておけば、将来のために積立をして退職金として受け取れます。
他にも小規模企業共済で支払った金額は全額所得控除の対象になるだけでなく、小規模企業共済に加入しておくことで事業資金の借入れも可能になります。
フリーランスのデメリットを埋める小規模企業共済に入れるようになるのは、開業届を提出するメリットと言えるでしょう。
フリーランスが開業届を提出するデメリット
フリーランスが開業届を提出するデメリットとして2つ紹介します。
- 売上や経費の計算が大変
- 失業給付金がもらえなくなる
それぞれ解説していきましょう。
売上や経費の計算が大変
開業届を提出すると、確定申告をするために売上や経費の帳簿付けが必要です。
手間が増えることや、計算が苦手な方にとってはデメリットと言えるでしょう。
しかし会計ソフトを利用すれば、とくに知識も計算をする必要もなく家計簿感覚でかんたんに帳簿付けができます。
確定申告も画面の指示に従って申告するだけでできるため、個人でフリーランスになる方は会計ソフトを使うと簿記の知識無くとも、かんたんに帳簿付けができます。
失業給付金がもらえなくなる
退職後、失業給付金をもらっている間に開業届を提出すると失業給付金をもらえなくなる可能性があります。
基本的に失業給付金は「次の仕事を見つけるまでの支援」なので、開業届を提出することで失業状態では無いとみなされるからです。
しかし開業届を提出しても失業給付金がもらえる場合もあるので、詳しくはお近くのハローワークに問い合わせてみるのが確実と言えます。
開業届を提出することで数ヶ月分の失業給付金がもらえなくなるのは、デメリットになってしまいます。
失業給付金をもらっている間はフリーランスになるための準備期間として開業届を出さず、勉強したり情報収集の期間にするほうが賢明かもしれません。
開業届を提出するために必要なもの
フリーランスとして開業届を税務署に提出するために必要なものは、次のとおりです。
- 印鑑
- 開業届
- 本人確認書類
- マイナンバーカード
- 青色申告承認申請書(任意)
1.印鑑
税務署へ直接開業届けを提出する場合に、印鑑を用意しておくと安心です。
開業届の書類に不備があり、修正が必要になった場合に修正印として必要となります。
2.開業届
税務署に提出するために必要です。
3.本人確認書類
本人確認書類として認められているのは次の3点のみです。
- 運転免許証
- パスポート
- マイナンバーカード
4.マイナンバーカード
開業届を直接提出する場合でも、オンラインで提出する場合でも必要になります。
「マイナンバーが確認できる書類」でも代用は可能ですが、確定申告はマイナンバーカードがあったほうが、かんたんに提出できるため作っておいたほうがいいでしょう。
5.青色申告承認申請書(任意)
青色申告承認申請書を提出しなければ65万円の控除は受けられません。
開業届を提出する最大のメリットを失ってしまうため、任意ですがかならず提出しましょう。
フリーランスが開業届を提出するタイミングと期限
![](https://navi-navi.heteml.net/freelance/wp-content/uploads/2023/12/kakuteipaui2712-2675_TP_V4.jpg)
開業届を提出する期限はは「事業を開始してから1か月以内」と、所得税法第229条※で定めています。
※出典:e-Gov法令検索
しかし、期限を過ぎたからといってペナルティがあるわけではありません。
開業届を提出するタイミングは、フリーランスとして「初めて仕事を受けた時」または「事業を始めるための準備期間」に提出すると良いでしょう。
フリーランスが開業届を提出する手順
フリーランスが開業届を提出する手順は、3ステップです。
- 開業届を入手する
- 開業届に記入する
- 開業届を提出する
開業届を提出する手順は「窓口や郵送での提出」と「オンラインでの提出」によって多少変わってきます。
先に窓口や郵送で開業届を提出する手順を紹介します。
1. 開業届を入手する
まずは開業届を提出するための書類を手に入れましょう。
書類の入手方法は以下の2点です。
- 税務署で入手する
- オンラインでダウンロードする
税務署に直接取りに行く方法よりも、国税庁のホームページからダウンロード※して印刷するほうが、すぐに手に入るからおすすめです。
出典:国税庁
2. 開業届に記入する
![](https://navi-navi.heteml.net/freelance/wp-content/uploads/2023/12/スクリーンショット-2023-12-04-16.50.33-656x1024.png)
開業届を入手したら書類に必要事項を記入しましょう。
1:提出する税務署
最寄りの税務署名を記入します。
2:提出日
提出する日付を記入します。
開業日から1ヶ月以内にしましょう。
3:「納税地」「上記以外の住所地・事業所等」
「住所地」「居所地」「事業所等」いずれかにチェックを入れ、住所と電話番号を記入します。
住所地➡自宅など生活の拠点となる場所のこと
居所他➡長期間滞在しているが、生活の拠点にならない場所のこと(例:海外に住んでいるが活動拠点は日本という場合)
事業所等➡お店や事務所を持っている場合に記入
4:氏名/生年月日
氏名とフリガナ、生年月日を記入する。
5:個人番号
マイナンバーカードに記載されている個人番号を記入する。
6:職業
フリーランスとなって事業を行う業種を記入する。
(例:ライター/プログラマー/イラストレーターなど)
7:屋号
事業の名前を記入する。
屋号が必要ない場合や、すぐに思いつかない場合は空欄でも問題ありません。
8:届出の区分
はじめて開業届を提出する場合は「開業届」にチェックを入れるだけです。
9:所得の種類
「事業所得」にチェックを入れる。
10:開業・廃業等日
開業日を記入します。
提出日から1ヶ月以内が良いでしょう。
11:「事業所等を新増設、移転、廃止した場合」「廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合」
はじめて開業届を提出する場合は、空欄で問題有りません。
12:開業・廃業に伴う届出書の提出の有無
「青色申告承認申請書」は「有」にチェック
「課税事業者選択届出書」は「無」にチェック
13:事業の概要
事業の内容を書きましょう。
例:事業がライターだった場合は「雑誌やWebメディアなどに記事を作成し提供する」など
14:給与等の支払いの状況
従業員を雇用する場合は記入します。
15:源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無
従業員を雇用しないフリーランスは「無」にチェックを入れます。
16:給与支払を開始する年月日
従業員を雇用しない場合は空欄にしておきましょう。
17:関与税理士
顧問税理士がいる場合は記入します。
3. 開業届を提出する
開業届の記入が済んだら税務署に提出しましょう。
提出方法は2つあります。
開業届を提出する方法
- 窓口で提出する
- 郵送で提出する
それぞれ解説していきます。
窓口で提出する
開業届けを税務署の窓口に直接持っていく方法です。
開業届の書類に不備や修正が必要な場合でも、その場で修正可能なことがメリットでしょう。
税務署の営業時間
- 8:30~17:00
- 閉庁日(土・日曜日・祝日等)
郵送で提出する
管轄している税務署宛に開業届を郵送で提出することも可能です。
郵送で提出する場合は、開業届の控えを受け取るための「返信用封筒と切手」を忘れずに同封しましょう。
宛先は自宅の管轄である税務署です。
管轄の税務署を調べるなら
▶️国税庁HP:税務署を調べる
オンライン(e-Tax)で開業届を提出する手順
![](https://navi-navi.heteml.net/freelance/wp-content/uploads/2023/12/miyuPAUI2619_TP_V-1024x683.jpg)
国税庁の電子申告・納税システム「e-tax(イータックス)」を利用することで、オンラインで開業届が提出できます。
e-Taxで開業届を提出するには事前準備が必要です。
必要なもの
- マイナンバーカード
- マイナンバーカードを読み取るためのICカードリーダー又はスマートフォン
- 利用者識別番号の取得(e-TaxのHPから取得可能)
- パソコンにe-Taxのソフトをインストール
e-Taxで開業届を提出する手順
- e-Taxのソフトの申請・申告の一覧から「個人事業の開業・廃業等届出書」を選択
- 必要事項の入力(「開業届に記入する」の例を参照)
- マイナンバーをICカードリーダーまたはスマートフォンで読み込ませて送信
- 「所得税の青色申告承認申請書」も入力して送信する。
e-Taxで開業届を申請した場合書類による「控え」はもらえませんが、e-Taxで送信した開業届のデータを印刷することで「控え」の代用ができます。
開業届を提出する前にやるべきこと
フリーランスとして開業届を提出する前にやるべきことは2つあります。
- クレジットカードを作る
- 引っ越しを済ませておく
それぞれ解説しましょう。
クレジットカードを作る
開業届を提出する前に、可能であれば会社に属している間にクレジットカードを作っておきましょう。
フリーランスになると安定した収入が証明できないため、クレジットカードの審査に通らない可能性があるからです。
事業用と個人用で分けてクレジットカードを利用したいという方は、開業届を提出する前に作成しておきましょう。
引っ越しを済ませておく
近々引っ越しを考えている方は、開業届を提出する前に済ませておきましょう。
クレジットカード同様に、開業届を提出してフリーランスになると入居審査に通らない可能性があるからです。
フリーランスとして月100万円稼いでいる実績がある方でも、「安定した収入の証明が出来ない」という理由で入居審査が通らないということもあります。
開業届を提出する前、会社に名前が残っている間に引っ越しは済ませておきましょう。
開業届を提出した後にやるべきこと
開業届を提出してフリーランスになった後にやっておくべきことは、以下の4つです。
- 国民年金の加入
- 売上や経費の帳簿
- 国民健康保険の加入
- 青色申告承認申請書の提出
それぞれ解説していきましょう。
国民年金の加入
会社員からフリーランスになった場合、国民年金に加入する必要があります。
区役所の「保険年金係」で手続きができます。
会社を退職してから14日以内に加入手続きが必要なため、開業届を提出している頃にはすでに国民年金に加入しているでしょう。
売上や経費の帳簿
開業届を提出したら、確定申告を提出するために日々の売上や業務のために使った経費などを帳簿付けしましょう。
「青色申告」の65万円控除を受けるためには、複式簿記による帳簿付け。
経費の証明であるレシートや領収書を電子データで管理する「電子帳簿保存」などしなければなりません。
簿記に関する専門知識が無くても、65万円の控除を受けるために必要な条件がクリアできる会計ソフトを利用するのがおすすめです。
国民健康保険の加入
退職後、開業届を提出してフリーランスになったら国民健康保険に加入しなければなりません。
期限は国民年金と同様に退職後14日以内です。
会社の健康保険を最大2年間任意継続するという選択肢もありますが、独身の場合は国民年金のほうが安い場合がほとんどです。
任意継続か国民健康保険「どちらの保険料が安いのか」検討して選択しましょう。
青色申告承認申請書の提出
開業届を提出したらかならず「青色申告承認申請書」も同時に提出しましょう。
基本的に開業届を提出したあと、2ヶ月以内に青色申告承認申請書を提出しなければ65万円の所得控除を受けられないからです。
提出期限が過ぎてしまった場合、その年は「白色申告」でしか確定申告ができません。
白色申告には控除が無いため、基本的にデメリットしかありません。
期限があるとはいえ、青色申告承認申請書は開業届と同時に提出しましょう。
フリーランスの開業届に関するよくある質問
![](https://navi-navi.heteml.net/freelance/wp-content/uploads/2023/12/kakuteipaui2704-2697_TP_V-1024x683.jpg)
フリーランスになるために開業届を提出する際によくある質問をまとめました。
- 開業届を出さなかったらどうなりますか?
- 収入いくらから開業届を出す必要がありますか?
- 復数の仕事をする場合は職業欄になんて書くべきですか?
- 開業届を出してフリーランスになるにはいくらかかりますか?
それぞれ回答していきます。
開業届を出さなかったらどうなりますか?
開業届を出さなくても罰金や罰則といったペナルティはありません。
しかし節税効果の高い「青色申告特別控除」が受けられないなど、デメリットのほうが多いので開業届は出しましょう。
収入いくらから開業届を出す必要がありますか?
収入が無い状態でも事業を始めたら開業届を提出しましょう。
所得が赤字だった場合、その赤字を3年間繰り越せるなど、開業届を提出するメリットがあります。
収入が少ないから開業届を出さないというメリットよりも、開業届を出すメリットのほうが大きいです。
復数の仕事をする場合は職業欄になんて書くべきですか?
主な収入源となる職業を、1つ記入するだけで問題ありません。
開業届を出してフリーランスになるにはいくらかかりますか?
費用はかかりません。
たとえばWebライターとして事業を行う場合はパソコンが必要ですが、すでに持っている場合は購入する必要はないでしょう。
事業によって必要なものが違うため、仕事を始める準備費用はそれぞれかかりますが、開業届を提出してフリーランスになるための費用はかかりません。
まとめ
開業届は赤字の売上が繰り越せたり、最大65万円もの控除が受けられたりと、大きな節税につながるのが最大の魅力です。
開業届を提出するメリット
- 節税できる
- 社会的に信用される
- 小規模企業共済に入れる
開業届を出すことで、さまざまなメリットが得られるだけでなく「フリーランスとして独立したんだ」という自覚も生まれ、仕事に対するやる気もあがります。
著者はオンライン会計ソフトの「開業届の作成」サービスを利用し、記入後に郵送して開業届を申請しました。
画面の指示どおりに記入するだけで開業届が完成し、あとはプリントして郵送で送るだけだったので、不安なく簡単に提出できたのを覚えています。
書類漏れや記入漏れの不安がある方は、開業届の作成を行ってくれるサービスの利用がおすすめです。
開業届を提出したら、青色申告承認申請書の提出も忘れないようにしましょう。