デザイナーの経費は?経費率の目安とフリーランスが計上すべき項目一覧

デザイナーの経費

フリーランスのデザイナーは仕事の中で様々な出費が発生します。発生した出費を経費にすれば、確定申告でも税金を減らせて便利です。ただ経費に計上できる項目や計上する際の基準でよく悩むケースもあります。本記事ではデザイナーの経費について、計上すべき項目や経費率の目安とともに見ていきましょう。

目次

そもそも経費とは?

経費とは、事業の中で必要とした支出を指します。事業で利益を出すために使う必要のあったお金として申告するのが一般的です。

確定申告の際も売上から経費を引いて算出される所得をもとに税金を計算します。所得税をなるべく安くする上で経費は欠かせません。経費の具体的な事例として、出張のための交通費や会議費、クライアントとの食事代など様々なものが挙げられます。

フリーランスデザイナーの理想の経費率は?

経費を計算する際、「何%までであれば良いのか」は大きな課題です。デザイナーを含むフリーランスにとって理想的な経費率も見ていきます。

デザイナーの経費率の目安は50%

総務省の『日本標準職業分類』によれば、デザイナー(Webデザイナー含む)は「専門・技術サービス業」に分類される職種です。そしてサービス業の場合、経費率は50%程度が目安とされています。

年間の経費が年間の売上の半分程度に収まるように計上しましょう。

経費率が高すぎる場合には税務調査が入る可能性も

経費率が平均よりも高い場合、税務署による税務調査が入る可能性もあります。経費として計上した分があまりにも多いほど、税金計算の対象になる所得や税額が減るためです。

税務署からすると「支払うべき税金をわざと減らすために、意図的に経費計上している」と思われます。税務調査を極力避けるためにも、正当な根拠に基づいて経費計上してください。

【参考】業種や職種別の経費率の目安

参考として、業種や職種別の経費率の目安も載せておきます。

業種目安の経費率
卸売業90%
小売業80%
製造業70%
飲食業60%
サービス業50%

フリーランスデザイナーが経費にするべき項目一覧

フリーランスデザイナーが支払う費用で何を経費にできるのかを知っていると、実際に計上する時に便利です。

フリーランスが経費にできる費用・勘定科目一覧

まずフリーランス全般で経費にできる費用や勘定科目は、以下のようになっています。

具体的な費用勘定科目
事務所や自宅兼事務所の家賃地代家賃(自宅兼事務所は家事按分が必要)
事務所や自宅兼事務所の水道代・電気代水道光熱費(自宅兼事務所は家事按分が必要)
仕事関係の出張で使った電車やバスなどの交通費旅費交通費
出張中のホテルの宿泊費用旅費交通費
仕事での顧客との飲食代会議費・接待交際費
カフェなどで作業した時の飲食代会議費
パソコンや周辺機器、各種ソフトの購入費用・月額料金消耗品費(基本10万円未満、青色申告なら30万円まで)
車両や製作機械など高額な機材(固定資産)減価償却費(耐用年数(※)で割った分を毎年計上)
※例えばパソコンは4年
高額な固定資産の修理費用修繕費
業務用の電話の料金・郵便切手代・インターネット料金など通信費
クライアントとのチャットツールの料金通信費・消耗品費
クラウド会計ソフトの利用料金通信費・消耗品費
自身のスキルアップ費用研修費
必要な書籍の購入費用新聞図書費・研修費
自身ではできない作業を他のフリーランスや業者に依頼した費用外注費
名刺やパンフレット、公式サイトなど宣伝に役立つものの作成費用宣伝広告費
事業に関係のある人や企業の冠婚葬祭で送ったご祝儀や香典など冠婚葬祭費
事業税など税金の支払い(所得税・住民税・法人税は除く)租税公課
税理士への報酬支払報酬
上記に当てはまらない費用(事業用カードの年会費や事務所の清掃費用など)雑費

ただし勘定科目は自分で決められる仕組みです。上記の表に書いたものは目安ですので、ぜひ参考にしてください。

加えて自宅兼事務所のようにプライベートと兼用している場合、家事按分が必要です。自宅兼事務所であれば使っている間取りや時間の中で業務に使う割合を算出し、家賃や電気代にかけて経費にします。

デザイナーが特に経費にしたい費用・勘定科目

続けてデザイナーが特に経費にしたい費用と勘定科目は以下の通りです。

具体的な費用勘定科目
パソコンや周辺機器(ペンタブなど)消耗品費(基本10万円未満、青色申告なら30万円まで)
10万円以上のパソコン・周辺機器減価償却費(耐用年数(※)で割った分を毎年計上)
※例えばパソコンは4年
Adobe製品(IllustoratorやPhotoshopなど)の月額料金消耗品費・通信費(自由選択可)
フォントやデザインソフトの購入費用消耗品費(10万円以上は減価償却費)
コーディングソフトの購入費用消耗品費(10万円以上は減価償却費)
デスク周りの机・椅子・照明消耗品費(10万円以上は減価償却費)
事務所(自宅兼事務所含む)の家賃地代家賃(自宅兼事務所は家事按分が必要)
事務所(自宅兼事務所含む)の電気代・水道代水道光熱費(自宅兼事務所は家事按分が必要)
業務で使う携帯電話の料金通信費(プライベート用と併用の場合は家事按分が必要)
インターネット回線の料金通信費(プライベート用と併用の場合は家事按分が必要)
運営中のサイトのサーバー代・運営手数料通信費
クライアントとのチャットツールの料金通信費・消耗品費
クラウド会計ソフトの利用料金通信費・消耗品費
デザイン関係の専門書やビジネス関連書籍の購入費用新聞図書費
勉強会への参加費用研修費
クライアントとの会議やワークショップに出かける際の交通費公共交通機関:旅費交通費(ICカードで支払う場合もOK)自家用車のガソリン代:燃料費
出張などで使う自家用車のメンテナンス費用(オイル交換代・車検・自動車保険など)車両費
クライアントとの食事代会議費(クライアントの分まで支払った場合は接待交際費)
カフェで作業した場合の飲み物代会議費
コワーキングスペースの利用料金ドロップイン(1回利用)・回数券:会議費
月額固定での利用:地代家賃
名刺や業務用に発送する挨拶状・年賀状広告宣伝費
自身では難しい作業(SEOに基づいた文章作成など)を外注する費用外注費
個人事業税(年間所得290万円以上)や印紙税、公的文書の発行手数料租税公課
税理士への報酬支払報酬

Webデザイナーを含めデザイナーは以上のケースで費用を経費にできます。加えて個人事業税も経費にできるため、年間所得が290万円を超える見込みの方はぜひご活用ください。

逆に経費にしてはいけない項目は?

費用の中には経費として計上できないものもあるため、注意が必要です。以下のリストを参考にしてください。

  • 【基本】プライベート目的で購入・利用したものの費用
  • カフェなどで作業した際の食事代
  • IC交通乗車券へのオートチャージ分
  • 衣装代・美容代
  • 健康診断・人間ドックの費用
  • 支払った所得税・住民税
  • 社会保険料(国民健康保険料や国民年金保険料など):社会保険料控除になる
  • 交通違反の罰金
  • 事務所や自宅兼事務所を借りる際の礼金
  • 住宅ローンの元金:利子は経費にできる
  • 事業主の福利厚生費:従業員の福利厚生費はOK

フリーランスデザイナーの経費計上の方法

フリーランスのデザイナーが普段から経費を計上する際、以下の方法を使います。

【基本】領収書(レシート)や請求書を保存する

まず基本として、領収書(レシート)や請求書の保存は欠かせません。経費として計上した後、領収書や請求書は7年間は保存することが法律で義務付けられています。

加えて領収書や請求書をきちんと残しておかないと、実際に経費を計上する際に大変です。計上する前でも月ごとに整理した状態でファイルなどに保管することをおすすめします。なおネットなどで電子発行されたものは、プリントアウトしないで保存するルールです。

ちなみに領収書や請求書自体は、確定申告の際に申告書類に添付する必要はありません。ただし7年間保存しておかないと、万が一税務調査が入った際に不正を疑われてしまいます。提出義務はなくても、日頃からきちんと保管する癖を付けておくべきです。

領収書(レシート)がない場合は出金伝票を発行

もし手元に領収書(レシート)がない場合は、出金伝票を発行しましょう。出金伝票は支払ったにもかかわらず領収書やレシートが発行されない場合、代わりに自分で発行できます。

発行されない場合以外にも、領収書をなくしたり交通機関の運賃を支払ったりした際に便利です。書き方も日付・勘定科目・金額など領収書と同様の項目で記します。なお、出金伝票も保存期間は7年間です。

クラウド会計ソフトでこまめに計上

実際に経費を計上する場合は、クラウド会計ソフトでこまめに記録しましょう。最低でも月の1度は計上するようにすれば、確定申告の時期が来てもあまり手間がかかりません。

加えてクラウド会計ソフトであれば、勘定科目を選んで日付や金額を入力するだけで終わります。簿記の知識がなくてもできる点でも便利です。

逆に確定申告直前にまとめて計上しようとすると、何に支払ったのかが思い出せないケースも出てきます。思い出すのにも時間がかかる分、余計に申告作業に手間がかかりかねません。具体的な取引の記憶があるうちに計上しておくべきです。

フリーランスなら知っておきたい!税務調査への対策法

デザイナーを含めフリーランスが経費関係で気を付けなければならないものが税務調査です。税務調査について知っておくと、日頃から対策を兼ねた経費計上ができます。

税務調査とは?

まず税務調査とは、国税庁(税務署)が納税者が適正に税金の申告を行っているのかをチェックする調査です。特に提出された申告書類を見て、不正の疑いがある場合に行われます。

税務調査は法人・個人関係なく行われる可能性がある点に注意すべきです。個人事業主でも1%程度の確率で調査されます。特に以下の特徴に当てはまる場合は要注意です。

  • 確定申告を怠っている人
  • 毎年の売上や経費の金額の変動が大きい人
  • 経費率が60%を超えている人
  • 申告漏れの多い業種に当てはまる人(システムエンジニアや商工業デザイナーなど)
  • 売上が1000万円ぎりぎりの人(1000万円を超えると消費税の課税事業者になるため)
  • 開業から3年程度の人(開業から3年で事業が軌道に乗るとされているため)
  • 顧問税理士がいない人

税務調査の流れ

税務調査は予告なしにいきなり行われることはありません。以下のような一定の流れに従って行われます。

  • 税務署から事前通知が届く
  • 調査日の日程調整
  • 必要な書類の準備・顧問税理士との打ち合わせ
  • 調査日当日を迎える
  • 調査官の指摘事項に回答する
  • 調査結果を受け取る

事前通知が届く上に、調査に向けて準備できる時間もあるため、調査の通知が来ても落ち着いて対処することが大切です。

日々のまめな記帳と正直な確定申告が最大の対策!

税務調査に対策したい場合は、日頃からまめに記帳を行ったり正直な内容で確定申告したりすることが欠かせません。

そもそも税務調査が行われるのは、確定申告書類の内容に疑いがあるためです。領収書や請求書を決められた年数分だけ保管した上で、取引内容に基づいて計上や申告を行えば問題ありません。取引の証拠を見返しながら適正な数字や勘定科目を正確に入力しましょう。

調査官に説明できるような経費の目安も準備すべき

合わせて調査官にも説明できるように、経費の目安も準備しておくこともおすすめです。特に家賃のようなプライベート用と事業用が混同しやすい費用で、一部を経費にできる家事按分の目安は重要となります。

家事按分の目安を説明する場合、自宅の間取りや1日のうち仕事に使っている時間がカギです。間取りであれば全体のうち作業に使うスペースを、時間であれば1日のうち作業に充てている時間を根拠にできます。

以上の方法で出た比率分を経費にしておけば、税務調査が入っても調査官の問いにきちんと対応しやすいです。

税務調査が入っても誠実に対応する

税務調査の当日は、調査官から指摘事項に基づいた質問に回答します。回答の際は誠実さを心掛けて、わかりやすく明確に答えることが大切です。なお正直に答えるのは基本ですが、特に聞かれてもいないことまで話す必要はありません。余計なことまで話すと、かえって疑われる可能性があります。

逆に当日してはいけないのが、嘘を隠し通したり反抗的な態度をとったりすることです。嘘を隠し通そうとしても、相手は税制度のプロであるため必ず発覚します。

加えて税務調査はあくまでも指摘事項をめぐる交渉です。反抗的な態度をとっては、調査官の心証を悪くするだけでなく、矛盾を突かれて追徴課税される場合があります。

税理士に対応を任せるのも1つの手

税務調査に自分1人で対応できなさそうな場合、税理士に対応してもらうと無難です。特に税務調査への対策に慣れた税理士であれば、指摘事項にも冷静かつ適切に対応できます。必要最低限な回答が期待できるため、調査が短時間で済む点もメリットです。

隣に頼れるプロがいるというだけでも心の支えになるため、安心して税務調査に臨めるでしょう。

まとめ

デザイナーは仕事に関する出費であれば、普段業務で利用するパソコンやソフトだけでなく、事務所費や個人事業税まで経費にできます。

普段から経費や売上を計上していれば、確定申告も楽に済ませられる上に、税務調査への対策になります。明確な目安も準備した上で、本記事の内容を普段の会計作業にお役立てください。

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